奥村宏『徹底検証 日本の五大新聞』(七つ森書館)レビュー

徹底検証 日本の五大新聞

徹底検証 日本の五大新聞



 株式会社批判、「法人資本主義」論を唱えて、この分野での代表的存在である著者が、株式会社としての大手新聞社5社の来歴と現状を浚い、わが国のジャーナリズムの行く末を憂う。報道の自由を守るとの美名のもと、株式の譲渡制限により、その営業的基盤を固めてきた新聞社は、六十年代に当時の郵政相田中角栄により、その系列会社にテレビ放送の認可が与えられ、日本は世界でも稀に見るマスメディア集中国家として、その一歩を踏み出すことになる。が、現在、新聞の部数凋落に歯止めがかからず、新聞社自体に永年たまっていた膿が外に漏れ出してきている状況がある。渡辺独裁体制のもと無理な「発行部数第一主義」が限界にきている読売。オーナー家が君臨したまま奇妙な経営者支配を続けている構造から一転、テレビ朝日との株式相互持合いの体制に移行した朝日。大企業からは言論報道機関ではなく情報サービス会社であると見くびられている日経。今後は不動産事業に力を入れるつもりの毎日。財界のキモ入りによる経営再建から鹿内一族による乗っ取りを経て、右派の御用達新聞となったにもかかわらず、いまもなお経営難状態を脱しきれない産経。マスメディア集中体制の間隙を縫って投機家たちに攻勢をかけられたこともあるが、無論最大の危機は、新聞への“信頼”の度合が、年々落ち続けていることにある。権力と癒着しながら、その批判をするという道化めいた所作が、根底にあるのは言うまでもないだろう。日本の報道機関の歪んだ構造がコンパクトにまとめられて把握しやすい好著。