篠田真由美『閉ざされて』(角川書店)レビュー

本日のエピグラフ

 でも、わたしは踏み出せない。/醜くなくなった自分がどこへ向かって歩き出すのか、そのことをなにひとつ考えていなかった愚かさに気づかされて、呆然と立ち尽くす――(P91より)

閉ざされて

閉ざされて



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アレゴリカル
インプレッション
トータル41


 いいですね。最後に明かされる秘密が、心理スリラーを寓話の領域に一気に高める。読み手に若干の違和感を感じさせつつ、主人公の自意識の表出する線にそって小説を進めていく手際には、感嘆する。