鏑木蓮『イーハトーブ探偵 ながれたりげにながれたり: 賢治の推理手帳I 』(光文社文庫)レビュー

本日のエピグラフ

 その顔を見ると、学問というものはどこまでいっても果てがない。そんなことを教えたいのかもしれないと思う。(「ながれたりげにながれたり」p.16) 



ミステリアス
クロバット
サスペンス
アレゴリカル
インプレッション
トータル44


 作者が断片的に書き連ねてきた、名探偵宮澤賢治ものが、文庫でリリース。ちょっと、気づかなかったじゃんよ(笑)。各話に仕掛けられた大胆不敵なトリックが、モダニズムとヴァナキュラーな空気が混淆する物語世界にマッチしている。かなりグロテスクなトリックでも、そうとは感じさせないのだ。賢治の人物造形の確かさが、小説の安定感を醸し出す。