『デフレの正体  経済は「人口の波」で動く』 (角川oneテーマ21)

デフレの正体  経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)

デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)



 いやー、百聞は一見にしかずとはまさにこのこと、P118〜P137に載っている、70年前から今より40年後の日本在住者の年齢別人口動態の棒グラフを、次々に見せられれば、この「人口の波」、即ち団塊の世代団塊ジュニアの世代を頂とするグラフの山が、生産年齢のグループから非生産年齢たる高年齢のグループへと漸進していく様が、一目瞭然。ていうか、こんなことは分かっていたはずで、でも、結果的に分からなかったのは、我々の見たくない現実だったからか。この人口トレンドを生半可な少子化対策で引っくり返すのは到底無理、今後の日本は、金を使う生産年齢人口の減少と金を使わない(=貯蓄というかたちで、今後のための医療・福祉の先買いをしている)高齢者層の激増で、たとえ輸出製造業をはじめとした企業業績が回復しても、日本の内需は構造的に収縮し続けていく。それに対する著者の提言は、一番最後にまとめられているが、キーになるのは、高齢富裕層から若年層に対する所得移転*1、女性のより一層の就労、観光立国ということで、いずれも説得力がある。目先の数字と理論に拘泥する経済学者、エコノミストに痛烈なカウンターを喰らわせる、反経済学のベストセラー。

*1:ただ、著者はインタゲ政策には冷淡だけれども、若年層に、それこそ著者が提唱するように所得が四割以上嵩上げされるように、カネをばらまいて、結果的にインフレが起きたら、実質的にカネを貯めこんでいる高齢富裕層から若年層への所得移転になるんだけれども。