鈴木邦男『失敗の愛国心』(理論社)レビュー

[rakuten:book:12855856:detail]

 「よりみちパン!セ」のシリーズに、このひとが登場。「おわりに」で、編集者に著者が、他の出版社でも同様の企画がある旨話を振ると、「だから、ほかの出版社に鈴木さんをとられる前に」依頼した、と返答された件には、むべなるかな、と微苦笑。本書は、ヤングアダルト向けの右翼入門、というよりかは、著者の自分史を、「愛国」という運動の一軌跡として描いており、これは取りも直さず、“右”の立場からの戦後史の一視覚という意味合いも含んでいる。浅沼稲次郎刺殺事件をはじめ、当時の学生運動などの生々しい現場写真を載せたのには、編集部の勇断を讃えたい。本書を通読すれば、テーマが「愛国」というよりかは、ある種の“大義”を支える(に支えられる)テロリズム、その根底にある昏い情動を、いかに相対化するか、その試行錯誤を綴ったものとも読める。だから、実は若年層が本書を受け取るのにむずかしいところがあるとすれば、ここのところではないかと思われるのだけれども、いずれにせよ、家族が心配してたっていうエピソードには、泣かされるわけで。ここのところだよね、ホントに。