酒井啓子『<中東>の考え方』(講談社現代新書)

<中東>の考え方 (講談社現代新書)

<中東>の考え方 (講談社現代新書)



 西洋近代の覇権主義に翻弄される「ミドル・イースト」、アラブ世界を中心とした西アジアから地中海、北アフリカ地域の政治史を、闊達に説き語った。石油利権、シーレーンの防衛、世界大戦に冷戦、そしてパレスチナ問題に対テロ戦争。「中東」に展開される地政学は、そのままグレートゲームの延長線上にある。この中からビン・ラーディン率いる?「アルカーイダ」は生まれ、サダム・フセインは、これを逆手に取って、十年以上超大国に対抗し続けた。民族主義と「イスラーム主義」の切断線と、世俗的権威主義への堕落をイランに見て、他方テレ・メディアとウェブ社会に侵食されるアラブ諸国の現状も紹介して、現在進行形の政治史の面妖さを感得させてくれる。