松尾匡『新しい左翼入門―相克の運動史は超えられるか』(講談社現代新書)レビュー

新しい左翼入門―相克の運動史は超えられるか (講談社現代新書)

新しい左翼入門―相克の運動史は超えられるか (講談社現代新書)



 説きがたり左翼運動史批判的入門。抽象的理論を振りかざして「上から目線」の反発を招くか、あるいは現場の状況に埋没して自集団の限界と腐敗に鈍感になるか。日本近代の社会主義運動の蹉跌から何を学ぶか。著者は、変革の提起者・賛同者たちが、その運動のリスクをちゃんと負えるかどうかを重視して、ゆえにその責任がとれる範囲からの変革、即ち「草の根からの市民の自主的事業」としての必要性を訴える。「政治」というファクターは、この「事業」の展開上の社会的リスクを減らすことが求められる。一番最後に「左翼にとって不況は天敵」と釘を刺すのも忘れない。……実はこの本、ある新著の解毒として読み始めたのが、将来的な展望を現実的に示してくれなきゃ、その“運動”にはノレないよね。