石持浅海『彼女が追ってくる』(祥伝社ノン・ノベル)レビュー

本日のエピグラフ

 この世で最も質が悪いのは、頭がいいのにポリシーのない奴だ。(…)有罪か、無罪かどちらかにしてもらわないと、こちらも対応がしにくいではないか。(p.138)

彼女が追ってくる (碓氷優佳シリーズ)

彼女が追ってくる (碓氷優佳シリーズ)



ミステリアス
クロバット
サスペンス
アレゴリカル
インプレッション
トータル43


 「彼女が追ってくる」とは、この倒叙ミステリの主人公の述懐だが、「追ってくる」のは、むしろこの主人公のほうである。倒叙ミステリからホワットダニットへの転轍の趣向性ということもあるが、ここであからさまにされているのは、精神的優位をめぐる闘争性で、この意味で前作『君の望む死に方』の主題性を引継いでいる。このシリーズが、“闘争”をテーマとするのであれば、作者の作品群のなかでも異質な部類に入る。