有栖川有栖『江神二郎の洞察』(東京創元社)レビュー

本日のエピグラフ

 「最後は悪魔の証明の前に膝を屈するのが避けられないとして、ぎりぎりまで論理的な推理を積み上げようとする作品をどう評価しますか?」/「最高やないか。素晴らしく人間的で、詩的や」(「除夜を歩く」p.350)

江神二郎の洞察 (創元クライム・クラブ)

江神二郎の洞察 (創元クライム・クラブ)



ミステリアス
クロバット
サスペンス
アレゴリカル
インプレッション
トータル42


 ヘンな言い方になるかもしれないけれども、作者のある種のあそび、、、の部分に、この作者の魅力があるんじゃないかと思えてきた。作家としての余裕というより、余剰というべきか。論理パズラーに回収されない作家性を持て余すことなく、きっちりと一作品に仕立て上げていることこそ、作者の資力を示すものだろう。もちろん、本領の部分の切れ味も格別。