真藤順丈『墓頭』(角川書店)レビュー



 世界に胚胎する邪悪なるもの、暴力として顕現するそれを異形のものたちと対置させる。神話的定石を、二十世紀的精神史とクロスさせて描き切った大作。作者の練達の語り口が、我々の生存する世界の底を浚い出し、そこから立ち昇る瘴気で、屠られた稗史を現前させる。