高井忍『本能寺遊戯』(東京創元社)レビュー

本能寺遊戯

本能寺遊戯



 史実再検証読物として面白く読んだのですが、小説としての作者のねらいが奈辺を目指したのかが、ちょっとつかみ切れませんでした。「俗説」なるものをめぐる屈託の意識を前面に出しているのですが、何というか、あらかじめから、あまり真に受けないで下さい的なシグナルを発信するのは、その後の精緻さを目指された史料検討に読み手が付き合うのに、モチベーションが下がってしまうのでは、と。従来の「歴史ミステリー」におけるハッタリのありように、一石を投じたということかも。