坪内祐三『昭和の子供だ君たちも』(新潮社)レビュー

昭和の子供だ君たちも

昭和の子供だ君たちも



著者にしては、意気軒昂な「世代論」宣言である。終戦(敗戦)や日共の路線転換など、時代を画する象徴的な“出来事”をいかに通過したか(通過しなかったか)が、「世代」の精神性を規定して、その世代層に独特の厚みを作り上げていくのだろう。著者の目論むのは、戦後昭和精神史である。予科練をめぐるトラウマと高校全共闘、「新人類」の微妙な屈託を描いたエピソードが、個人的に感じ入った。戦後の“像”が、陰影深く浮き彫りにされる反面、どうしても日本のとりわけ都市住民の精神史という狭隘さが拭えないけれども。