有馬哲夫『日本テレビとCIA』(新潮社)レビュー

日本テレビとCIA 発掘された「正力ファイル」

日本テレビとCIA 発掘された「正力ファイル」



 
かねてよりCIAによる「日本愚民化計画」なんてネタは、東スポ等々のサブカルの専売だったわけです。で、本書で、アメリカによる反共文化政策の存在が、学術的に証明されてしまった。各紙誌(といっても、「紙」の方は系列の「テレビ」ともども、無視黙殺ですが)の既発のレビューの反復になるけれども、本書の業績を無視して“戦後”日本に言及することはできないだろう。――これは、親米保守論者に「属国」的自覚をさらに迫る、というより、むしろカルスタ系論者に、“文化”における生々しい“政治”の認識(スタティックな権力分析の結果析出される“政治”ではなく)を問う、ということである。大衆の文化(受容)における自律性という観点をベンヤミンから受け継いだカルスタは、CIAの反共スキームがその基礎を創り上げた「テレビ」文化において、“大衆”がいかなるディコーディングを遂行したか、これを「自律=自立」として叙述できるかどうか、今後のリアクションを期待したいものだけれども。…………1962年に大西洋を越える通信衛星中継実験が成功して、「ユニテル・リレー網」による世界ネットワーク構想は存在意義を失った。アメリカ・日本における熾烈を極める政治闘争は、「反共」もまた“利権”だったことを窺わせるが、そのストーリーのなかで吉田ドクトリンの姿がほのかに浮かび上がってくるのである。三浦展 『「自由な時代」の「不安な自分」 消費社会の脱神話化』も是非併読されたい。