伊坂幸太郎『死神の浮力』(文藝春秋)レビュー

死神の浮力

死神の浮力



 浮かぶものと沈むもの。いや、浮かべるものが、沈めさせることができるのだろう。作者が、不条理な暴力性を何度も主題にするのは、倫理性そのものの抹殺に抵抗し、対抗するための橋頭堡を築こうとしているのではないか、と思わせる。他者を弄った者に下されるのは、フィジカルに反転した極刑で、ブラック・ユーモアとしても、最高だ。