月原渉『黒翼鳥  NCIS特別捜査官』(新潮社)レビュー

本日のエピグラフ

 任務を終えて帰還すると、彼は英雄になっていた。そうなるよう、命令を下した人間たちが望んでいたからだ。(p.17)

黒翼鳥: NCIS特別捜査官

黒翼鳥: NCIS特別捜査官



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 シリーズ第二作目も、手ごたえのある力作だ。軍隊内部に交錯する“政治的なもの”と“社会的なもの”が、不可能犯罪のロジックを重畳化する結構は、作者の筆捌きもあって、否応なしに興味を引く。暴力の政治的エコノミーの質的差異へ向ける眼差しが、アンチミステリへと反転する可能性を探っているようでもある。