天祢涼『セシューズ・ハイ 議員探偵・漆原翔太郎』(講談社)レビュー

本日のエピグラフ

 「(…)かくして子ども達は政治家を避け楽にほめてもらえる職業を選び、政治の空洞化が進んでいくのです。/そこで出番となるのが、僕ら世襲議員です。/(…)云ってみれば僕ら世襲議員は『政治家』という職業を守る、最後の砦なのです。(…)」(p.6)

セシューズ・ハイ 議員探偵・漆原翔太郎

セシューズ・ハイ 議員探偵・漆原翔太郎



ミステリアス
クロバット
サスペンス
アレゴリカル
インプレッション10
トータル45


 痛快作。探偵役の天然二世議員と堅物秘書のかけあいが堂に入っててとてもいいし、何よりもコミック調のペースを崩さずに、心理的な奸計の構図を描き出してくれるのは、実にクールだ。昨今の政治を題材にした小説が、ある種のカリスマ的存在を描き出すのに空回りしているのに対して、本作がトリックスターの存在感に焦点を当てているのが、かえって現在的なカリスマのリアリティを穿っているのは、企図されたものだろうか。とにかく、続編を期待!