鳥飼否宇『死と砂時計』(東京創元社)レビュー

本日のエピグラフ

 「あやうく焼却処分されそうになったのを、研究用という名目で引き取って、自分の手元に置いておくことにした。医師の役得だな。メメント・モリ、『死を忘れるな』という教訓だよ」(p.183) 



ミステリアス
クロバット
サスペンス
アレゴリカル
インプレッション
トータル44


今年に入って、作者名義の作品が矢継早に刊行されるようだ。本格ファンとしては、頼もしいばかりだが、先陣を切る本作は、残酷なエキゾチズムとソリッドな逆説的論理が相まって、硬質な小説的印象を醸し出す。真相を作者のフィールドに引き入れた感のある話がやっぱり興味深かったけれども、ラストシーンの暗転に、スタイリッシュなニュアンスが出ているのは、さすが。