北山猛邦『オルゴーリェンヌ』(東京創元社)レビュー



 前作より七年ぶりの続編だが、率直な感想としては、“世界”の空間性に思ったほど奥行がないので、“物語”の重層性の演出が矯められてしまった、ということだった。作者の手つきとして、現実の世界との切断の仕方が、かなり大雑把なため、現実の世界の意味性、ニュアンスが、裏側から密輸されてしまう印象があるが、それがユーモアとして解釈できる余地がある場合もあるが、本作では小説のバックボーンの脆弱さとして露出していないか。もっとバカミス的アプローチを意識していれば、訴求性はあったと思う。