藤井青銅『「日本の伝統」という幻想』( 柏書房)


「日本の伝統」という幻想

「日本の伝統」という幻想


 前作『「日本の伝統」の正体』の続編的体裁で、世にはびこる「伝統ビジネス」と「伝統マウンティング」の真実を抉り出す。前作では、日本の伝統とされる諸々を、その歴史の浅さを容赦なく詳らかに晒して、数々の歴史企画本を物している著者の面目躍如だったが、本作では諧謔味をもっと強くして、「伝統」なるものを振り回しながらも振り回される、この国の集団性向の滑稽さを、飄々とする語り口で剔抉していく。あとがきまで読み終わると、「日本の伝統」がトレーディングカードのごとく思えてくる。