松本寛大『玻璃の家』(講談社)レビュー

本日のエピグラフ

 黄色い街灯が冷えた敷石に彼の影を映していた。ああこれは僕の顔だとコーディは思った。黒く塗りつぶされた影は、鏡を見るよりもはっきりと彼自身だと知覚できるものだった。(P275より)

玻璃の家

玻璃の家


 
ミステリアス
クロバット10
サスペンス
アレゴリカル
インプレッション10
トータル47


 第1回の福ミスは、いやあ期待値をはるかに上回る出来映えです。何よりも、文章が歯切れよく、論理的に運ぶ部分とセンチメンタルに演出する部分のメリハリが効いている。カタルシスを覚えるのは、事件の詭計が暴かれることよりも、真犯人を明かした上で、「相貌失認」の少年が、犯人の顔を同定するのに、探偵の側が仕掛けたトリックが功を奏する瞬間である。本格云々というだけでなく、たぶん、今年度ピカイチの新人。