2018-01-01から1年間の記事一覧

樋口有介『平凡な革命家の食卓』(祥伝社)レビュー

平凡な革命家の食卓作者: 樋口有介出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2018/04/11メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る ケーサツ小説を作者らしくシニカルに料理すれば、こんな感じになる、という期待値は裏切らない。作者らしい軽妙さと裏腹の不…

深水黎一郎 『虚像のアラベスク』(KADOKAWA)レビュー

虚像のアラベスク作者: 深水黎一郎出版社/メーカー: KADOKAWA発売日: 2018/03/02メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る 作者のスノビズム的アプローチが、絢爛さと叙情を湛えたものになるか、それとも虚像のハレーションが炸裂する道程を露わに…

倉知淳『豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件 』(実業之日本社)レビュー

豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件作者: 倉知淳出版社/メーカー: 実業之日本社発売日: 2018/03/28メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (3件) を見る 前作『皇帝と拳銃と』より、作者の持ち味が凝縮されたような短編集だが、それだけ本…

麻耶雄嵩『友達以上探偵未満』(KADOKAWA)レビュー

友達以上探偵未満作者: 麻耶雄嵩出版社/メーカー: KADOKAWA発売日: 2018/03/30メディア: 単行本この商品を含むブログ (7件) を見る 若い本格の書き手たちが、ラノベ方面に媚を売りつつアイロニカルなギミック構築に力を入れてるの見て、マジメ感漂うほど少な…

知念実希人『祈りのカルテ』(KADOKAWA)レビュー

祈りのカルテ作者: 知念実希人出版社/メーカー: KADOKAWA発売日: 2018/03/29メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る 快走状態が続く作者は今度は研修医を主人公に据えた連作を物したが、作者の期待値からすれば、何か突拍子もないギミックを仕掛…

はやみねかおる『奇譚ルーム』(光文社)レビュー

奇譚ルーム作者: はやみねかおる,しきみ出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2018/03/15メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る 一応PRにはヤングアダルト向けとあるのだが、一般向けの体裁でも良かったのではないかな。直観的に物語の方向…

蒼井碧『オーパーツ  死を招く至宝 』(宝島社)レビュー

【2018年・第16回「このミステリーがすごい! 大賞」大賞受賞作】 オーパーツ 死を招く至宝 (『このミス』大賞シリーズ)作者: 蒼井碧出版社/メーカー: 宝島社発売日: 2018/01/18メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る いやあ、今年のこのミス大…

長岡弘樹『にらみ 』(光文社)レビュー

にらみ作者: 長岡弘樹出版社/メーカー: 光文社発売日: 2018/03/15メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る 短編ミステリの匠の道をひたすら歩んでいる感のある作者だが、本作品集は、読者の嗜好によって各短編の評価は分かれるだろう、という意味…

薬丸岳『刑事の怒り』(講談社)レビュー

刑事の怒り作者: 薬丸岳出版社/メーカー: 講談社発売日: 2018/02/01メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る 推協賞受賞作はまとまりのよい作品だったが、作者の期待値からいえば、どうにも物足りないものだった。が、本作品集を通読してみて、受…

いとうせいこう『小説禁止令に賛同する』(集英社)レビュー

小説禁止令に賛同する作者: いとうせいこう出版社/メーカー: 集英社発売日: 2018/02/05メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る 小説、という存在を、形式として捉えるのでなく、行為として捉えるとしたら。“表現”というもののサブカテゴリーとし…

岡崎 琢磨『春待ち雑貨店 ぷらんたん』(新潮社)レビュー

春待ち雑貨店 ぷらんたん作者: 岡崎琢磨出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2018/01/22メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る いちばん最後のお話がミステリーっぽかったけど、この作者、似たような話を書き続けるのかなあ。読者に求められている…

山口雅也『落語魅捨理全集 坊主の愉しみ 』(講談社)レビュー

落語魅捨理全集 坊主の愉しみ作者: 山口雅也出版社/メーカー: 講談社発売日: 2017/05/11メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る 古典落語の本歌取りミステリとか諧謔ファースとか、そんなもんでなく、ただひたすらパンキッシュ。ナンセンスの意…

横関大『仮面の君に告ぐ 』(講談社)レビュー

仮面の君に告ぐ作者: 横関大出版社/メーカー: 講談社発売日: 2017/12/14メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (2件) を見る SF的設定が大して引っかかりもなく読み進められるのは、小説がうまいからかもしれないけれど、それより作者がギ…

近藤史恵『インフルエンス』(文藝春秋)レビュー

インフルエンス作者: 近藤史恵出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2017/11/27メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る 作者らしい、というのと、作者でなくても、というのと、その中間の地点でカタルシスを得た気分。関係性の生々しさを剔出する手…

長岡弘樹『教場0 刑事指導官・風間公親』(小学館)レビュー

教場0: 刑事指導官・風間公親作者: 長岡弘樹出版社/メーカー: 小学館発売日: 2017/09/26メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る 各話サブタイトルが刑事コロンボをもじっているけれど、探偵役と犯人役の丁々発止より、刑事職人小説としての持ち…

貴志 祐介『ミステリークロック 』(KADOKAWA)レビュー

ミステリークロック作者: 貴志祐介出版社/メーカー: KADOKAWA発売日: 2017/10/20メディア: 単行本この商品を含むブログ (8件) を見る まあ年一作の長編を楽しみにする作家はいくらかあれど、年一作の中短編を楽しみにされるのは、このシリーズぐらいしかない…

田口ランディ『逆さに吊るされた男』(河出書房新社)レビュー

逆さに吊るされた男作者: 田口ランディ出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2017/11/11メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る この作者がオウム真理教事件にアプローチするとは、似つかわしいのか却ってちぐはぐな感じがするのか。読了して、…

倉知淳『皇帝と拳銃と』(東京創元社)レビュー

皇帝と拳銃と作者: 倉知淳出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2017/11/30メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る 前作『片桐大三郎とXYZの悲劇』のインパクトと巧緻さには及んでないが、作者の期待値を満足させてくれる出来かな。まあ、倒叙…

伊坂幸太郎『ホワイトラビット』(新潮社)レビュー

ホワイトラビット作者: 伊坂幸太郎出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2017/09/22メディア: 単行本この商品を含むブログ (17件) を見る 作者がミステリーというかクライムノベルにかける情熱がつかみづらくなってきているというか、ワタクシ的にはカタルシスを…

櫻田智也『サーチライトと誘蛾灯 』(東京創元社)レビュー

サーチライトと誘蛾灯 (ミステリ・フロンティア)作者: 櫻田智也出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2017/11/13メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る 泡坂妻夫エピゴーネンの衣装を纏っているようだが、むしろそこからはみ出たリリカルな部分…

『このミステリーがすごい! 2018年版』 (宝島社) レビュー

このミステリーがすごい! 2018年版作者: 『このミステリーがすごい!』編集部出版社/メーカー: 宝島社発売日: 2017/12/09メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る 今年はあのゾンビミステリーの年ではなく、陳浩基『13・67』の年でしょ、やっ…

太田忠司『万屋大悟のマシュマロな事件簿』(ポプラ社)レビュー

万屋大悟のマシュマロな事件簿作者: 太田忠司出版社/メーカー: ポプラ社発売日: 2017/12/08メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る このようなかたちでのロコドル・ミステリ連作は作者らしいっていえば、そう。オヤジ小説的な基調で、一筋縄では…