北森鴻『ぶぶ漬け伝説の謎』(光文社)レビュー

ぶぶ漬け伝説の謎 裏京都ミステリー

ぶぶ漬け伝説の謎 裏京都ミステリー


 
ミステリアス8 
クロバット8 
サスペンス7 
アレゴリカル6 
インプレッション10 
トータル39  


 いやはやうまいのなんのって、小説は相変わらず上手いし、出てくる小料理は相変わらず美味そうだし、<本格>的には相変わらずプロット・ロジックの展開が巧い。絶賛したい場合には「三度のヨメ」を使うのが定番だけれども、こちとら「三頭のウマ」で対抗しようかしらん。――山村美紗とウエストレイクの物語世界の素材を、名料理人・北森鴻がさばいて酒の肴に相応しい感じで盛り付けた、というか(隠し味は、那智シリーズ?)。表題作が集中一番アクロバティック、「悪縁断ち」は謎の設定がウマい、「白味噌伝説の謎」は“ありえない論理”の奇妙なリアリティが「京都」という小宇宙を背景に立ち上がって来る。やはり作者は泡坂チルドレンなのだなあ。