本日のエピグラフ
究極のところ科学鑑定には、絶対ににせものだという結論は出せても、絶対にほんものだという結論は出せないんです。(「論点はフェルメール」P229より)
- 作者: 門井慶喜
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2006/09
- メディア: 単行本
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ミステリアス | 9 |
アクロバット | 9 |
サスペンス | 8 |
アレゴリカル | 8 |
インプレッション | 9 |
トータル | 43 |
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高橋克彦、北森鴻の先達に十分比肩しうる出来映え。美術ミステリは、必然的に美術史ミステリになり、歴史ミステリ、歴史ディテクティヴにつながってくるわけです。美術ミステリといったら、「真贋勝負」を典型に、その作品の来歴を追うのが主眼だけれども、本作ではそれをパースペクティヴの闘争というコンセプトとして描き出した。視座の設定によって、歴史=物語が歪んでたわむ。それが当該作品に“(付加)価値”として回帰してくる。もしくは、「アウラ」として。あるいは呪縛として。――「パースペクティヴの闘争」を全面的に主題化した表題作や「論点はフェルメール」、“視座”の転換がそのまま<歴史>を反照させる「早朝ねはん」の切れ味の鋭さもさることながら、「紙の上の島」は<歴史>のナラティヴさを揶揄した佳品。今年の新人賞ですね。