本日のエピグラフ
「だけど僕は科学者だからね。心理的に不自然な説と物理的に不可能な説では、どっちを選ぶかと訊かれれば、多少抵抗はあっても前者を選ばざるをえない。(…)」(P196より)
- 作者: 東野圭吾
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2008/10/23
- メディア: 単行本
- 購入: 11人 クリック: 60回
- この商品を含むブログ (250件) を見る
ミステリアス | 8 |
アクロバット | 9 |
サスペンス | 8 |
アレゴリカル | 9 |
インプレッション | 8 |
トータル | 42 |
---|
件のX論争の余波からか、本書の書評に、どこぞの何某に対する(笑)ビミョーな当てこすりを含んだよーなそーでないよーな、そんなニュアンスを持つものが少なくないようなのですが、もっと素直に論じないと、本作の美点を論じ逃すような気がします。いわゆる「未ОООО」テーマを逆手にとって、探偵小説・本格ミステリにあらまほしき“ありえない論理”を紡いでみせた。そして、犯人が“ありえない論理”を構成したのは、被害者の採用している“論理”がまた“ありえない”ものだからである。目的のためなら手段を選ばぬ、というか、目的と手段の現実的な均衡を著しく欠いているという意味では、本作の被害者と『献身』の石神は、実は双子の兄弟であるともいえる。“ありえない論理”を行使しようとする男に対して、女はそのロジックをそのまま裏返すかたちで、逆襲するのである。正に、『救済』は、『献身』の正統的な続篇なのだ。