岸田るり子『天使の眠り』(徳間書店)レビュー

本日のエピグラフ

 「傷は深いの?」/「深いというよりも、複雑なんだ」/「複雑骨折みたいなもの?」/「(中略)治るのに時間がかかりそうだ」(P305〜306より)

天使の眠り

天使の眠り


 
ミステリアス8 
クロバット9 
サスペンス8 
アレゴリカル9 
インプレッション8 
トータル42  


 おそらくは、デビュー前年までに新人賞に投稿されたものをブラッシュアップしたものだと思うけれども、満足満足。ネタの割り振りの仕方は堂に入ったもの。「女性はすべてではない」というテーゼを実践したような作品だけれども、その反面オトコの性欲をコケにしたような展開になるのは、作者の意図なのかなあ。ともあれ、図式的に企まれた分、物語の帰趨がドロドロになりそうなところを、うまい具合にファミリーロマンスに纏めた。子どもをイノセントに扱ったのは成功だった。