仲正昌樹『集中講義!アメリカ現代思想―リベラリズムの冒険 』(NHKブックス)

集中講義! アメリカ現代思想 リベラリズムの冒険 (NHKブックス)

集中講義! アメリカ現代思想 リベラリズムの冒険 (NHKブックス)



 「集中講義!」シリーズの第二弾。アメリカのリベラリズムの思想的展開を、アメリカ戦後史の流れとともに概説した。ハイエクアレントロールズアメリカの戦後「リベラリズム」の源流とするならば、主にロールズへの批判として、リバタリアニズムコミュニタリアニズムの諸潮流が展開され、さらに「差異の政治」と保守主義との対決、「リベラル・アイロニスト」を自称するローティの登場と、ロールズの「戦略転換」、そして9・11後の「リベラル左派の右旋回」と、自由=民主主義体制の大義と実践の模索と挫折、アメリカという「未完のプロジェクト」の試行錯誤の歴程は、高邁な理想と議論の裏に、常にキナ臭さがつきまとう。“思想”というもののダイナミズムを担保するのが、やっぱりきわめてフィジカルなアクション/リアクションであることを痛感させられるが、ともあれ、リベラリズム総体の論点整理と、もちろん更なる思索に有用であるのは間違いない。