道尾秀介『片眼の猿』(新潮社)レビュー

本日のエピグラフ

 しかし、眼に見えているものばかりを重要視する連中に、俺は興味はない。(P268より)

片眼の猿 One‐eyed monkeys

片眼の猿 One‐eyed monkeys


 
ミステリアス9 
クロバット10 
サスペンス9 
アレゴリカル10 
インプレッション10 
トータル48  


 初読のときは、やっぱり今は伊坂幸太郎チックなソフトボイルドがブームになりつつあるのを上手く利用したなあ、とか、でもハードボイルドパロディということで『葉桜』といろいろと比較されるんかなー、とか、まあしかしネタ振りの手付きはもう堂に入ったもので、もうルーキーなんて呼べないよなあ、なあんて思ってたワケですよ。でさ、改めて伏線拾おうとして再読したらさ、目頭熱くなっちゃってさー…………参ったですよ、オレ。探偵小説的なヨコシマな読み方してさあ、登場人物の“人生”が立ち上がってくるんだもの、“伏線”から。とりわけ「15 トウヘイのクイズ」の章の…………探偵小説的技巧がカタルシスを呼び込むという点で、『葉桜の季節に君を想うということ』以来の快挙と、やっぱり言いたいです、オレ。