道尾秀介『ラットマン』(光文社)レビュー

本日のエピグラフ

 「この文脈効果に、命名効果ってのが重なると、幽霊はよりはっきりとしたかたちを持ってくる」(P63より)

ラットマン

ラットマン


 
ミステリアス
クロバット
サスペンス
アレゴリカル
インプレッション
トータル45


 <幽霊>=現前しながら現前しないものをめぐるトリック小説。“ロジック”小説でないのは、それが裏切られるということを、物語の本質として抱えているからだ。本格ミステリこそ“人間”を書くのに適した装置であると認識を表明している作者だけれども、本格ミステリで<他者>を描くということにまで視野を入れているのかもしれない。クールさとエモーショナルな筆致のバランス、その匙加減にも作者の技量を確かめることができる。