山家悠紀夫『日本経済見捨てられる私たち』(青灯社)レビュー

日本経済 見捨てられる私たち (青灯社ブックス)

日本経済 見捨てられる私たち (青灯社ブックス)



 元銀行エコノミストで、一貫して「構造改革」を批判し続けてきた著者の、現代日本経済講話。経済学的な“良識”と、経済学では解決できぬ問題性の、目配りのバランスが活きている。“搾取”というコトバは使われていないものの、企業側の利益の独占はもとより、グローバリズムの下、この国が食糧自給率をあげることが、食糧輸出国の農民にも利するところありとするのは、とりわけ発展途上国での生産物が自国で消費されずに外に出て行ってしまう現状を考えれば、一概に否定はできないだろう。サブプライム問題がきっかけで、実質実効為替レートからみれば、過度な円安傾向にあった日本は、もはや全面的な外需頼みはできない状況になった。内需の冷え込みをいかに回復させるかは、もうはっきりしているのだけれども、現状の「構造」を維持したまま財政赤字を増やしかねないからねえ、この国は。そもそも「構造改革」が財政改善になんら寄与しなかったわけだし。それに、財政赤字は必然的に通貨価値の下落、円安を招来させるわけだし。ということをぼやいてもアレなんですが、いずれにせよ、この国のどんづまり状況がわかやすく提示されているのは確か。