橋本努『経済倫理=あなたは、なに主義?』(講談社選書メチエ)レビュー

経済倫理=あなたは、なに主義? (講談社選書メチエ)

経済倫理=あなたは、なに主義? (講談社選書メチエ)



 ネオコンネオリベコミュニタリアニズムリバタリアニズムに従来型のリベラリズム、そしてマルクシズムに平等主義――政治‐経済と“倫理”のあいだをつなぐイデオロギーの諸々を総点検。時事問題の論点の差異に基づいて作られたチャートにて、あなたのコミットしているイデオロギーを確認する。無論、このようなかたちで、諸“思想”を学習するのが目的だけれども、類型化されて紹介されたそれよりも、近代卓越主義や共和主義などの類型から漏れたイデオロギーをチェックするのも肝要。*1てか、ワタクシは共和主義者でありました、本書に従えば。異存はありません。さらに、「包摂主義」と「非包摂主義」の区分けによる経済問題におけるポジショニングの検討、また「市場」と「統治」の倫理を再検討・再類型化し、最後にあなたのイデオロギーを確認するためのアンケートが待っている。著者のいうように「私たちの生きる現代社会には大したイデオロギー対立があるわけでも」ないのだけれども、それゆえに、「人々の情動にによって、政治が動いてしまうかもしれない」。だからこそ、イデオロギーなるものを亡霊化させず、議論の俎上に載せなければならない――のはわかるけれども、イデオロギー対立がなくなったのは、それに無関心になったわけでなく、人々がむしろ意識して諸イデオロギーに等間隔に距離を置いているせいかもしれず、とするならば、プラグマティックな意識は、各イデオロギーから重要な知見を汲みだすのに、やっぱり必要なんじゃないか、と。

*1:この章、第二章の2「補説:社会民主主義の分裂」は、現代の左派の十字路を簡潔に示していて、こちらも必読。