初野晴『1/2の騎士』(講談社ノベルズ)レビュー

本日のエピグラフ

 「(…)これからあなたたちが社会に出て不用意に傷つかないうちに、ここにはそれを教えてあげられる環境がある。(…)」(P14より)

1/2の騎士 harujion (講談社ノベルス)

1/2の騎士 harujion (講談社ノベルス)


 
ミステリアス
クロバット
サスペンス
アレゴリカル
インプレッション
トータル41


 この作者の独特の感覚は、やっぱり綾辻行人とは微妙に一線を画していると思う――“社会”性の大胆な導入、といったレベルではなくて。おそらく“世界”に対する違和の表明の態度、そこのところの相違なんだろうけれども。綾辻を中において、一方に初野、そしてもう一方に詠坂雄二をおくと、何か面白いマトリックスが描けそうな気がするんですが。…………本作は、リリカルな意識とサイコパスの陰影が、“現在”の諸位相と拮抗させられているようで、奇妙な読み心地。“本格”的アプローチが、ここのところを塗りつぶしていないのは、良い仕事でした。