本日のエピグラフ
「いや、慰めはいらん。わしの暗い世界観など忘れて、眼の前のモンスターを倒すんだ。隠れ場所が必要なら、わしの研究室を提供しよう。他に敷地内の恰好の隠れ場所を教えてもいい。(…)」(「モンスターズ」P326より)
- 作者: 山口雅也
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/03/28
- メディア: 単行本
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ミステリアス | 9 |
アクロバット | 9 |
サスペンス | 9 |
アレゴリカル | 10 |
インプレッション | 9 |
トータル | 46 |
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表題作は、過ぎし日の異形の者たちの残影を、懐かしみながら、“技術”が全面的にモンスタライズされる前夜の不吉さの中で描き出す。なるほど、「透明人間」が、そういう寓意を持つなら、レヴィナスは「透明人間」を讃えただろう。そして、ハイデガーは、やはり“不気味なもの”として、排除しただろうか――。哲学的寓喩と絶妙なアクロバティックな技巧の止揚。冒頭の「もう一人の私がもう一人」には、思わず身悶え。思ってみれば、ドッペルゲンガーは、フロイトが“不気味なもの”と措定したのだった。このふたつの作品に挟まれた四編は、ある種の“欲望”をめぐる物語として、作者らしいギミックを仕掛けた絶品。