2009年上半期本格ミステリベスト5

 今年は、上半期2008年11月〜2009年4月よりも、下半期がメインですな。もうすでに、いろいろ出てるし、三津田、柳の新作が待ってるし。読み逃した傑作佳作に、ベストテンで出会えるのを、期待しつつ…… 


玻璃の家

玻璃の家



第1位:松本寛大『玻璃の家』
 本年の紛れもない収穫。既存のミステリーの文法から、一歩先んじようとする意識は、可能性という意味で、十分頼もしいものだろう。あとは、批評する側の誠実さの問題である。

 

秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)

秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)

秋期限定栗きんとん事件 下 (創元推理文庫 M よ 1-6)

秋期限定栗きんとん事件 下 (創元推理文庫 M よ 1-6)



第2位:米澤穂信『秋期限定栗きんとん事件 上・下』
 自意識、っていうのは、青春の厄介者です。次作で、自意識なるものと、小鳩くんは徹底的に対決することになるのでしょうか。
 
 
奇蹟審問官アーサー 死蝶天国 (講談社ノベルス)

奇蹟審問官アーサー 死蝶天国 (講談社ノベルス)



第3位:柄刀一『奇蹟審問官アーサー 死蝶天国(バグズ・ヘブン) 』
 風格、だわなあ。宗教上の“幻想”と、ミステリーとしての“幻想”の、その交錯するところに、“物語”のリアリティが立ち上がる。

 

神器〈下〉―軍艦「橿原」殺人事件

神器〈下〉―軍艦「橿原」殺人事件

神器〈上〉―軍艦「橿原」殺人事件

神器〈上〉―軍艦「橿原」殺人事件



第4位:奥泉光『神器―軍艦「橿原」殺人事件― 上・下』
 アンチミステリとして。だけれども、ほんとに読むのが愉しい小説です。あらゆる“偽史”から遠く離れて、探偵小説もまた欺瞞の装置として、葬られるのだろうか。

 

短劇

短劇



番外:坂木司『短劇』
 海外の“奇妙な味”系の古典群とくらべても、何ら遜色のない作品集。このミス、週刊文春でベストテン入りしても全然おかしくないけれども、おかしいことにテン入りしなかった場合、読み逃してしまう不幸なひとたちを出さないためにも、あえて番外で取り上げた次第。