長谷川幸洋『日本国の正体 政治家・官僚・メディア――本当の権力者は誰か』(講談社)レビュー



小泉政権末期から数々の審議会委員を務めて、霞が関官僚の権力の差配ぶりを目の当たりにしてきた著者が、官僚と、彼らに踊らされる政治家と大マスコミの実態を、自省の念をこめて告発する。既得権益維持のための増税路線を敷こうとする財務省の暗躍ぶりがメインの話になるが、情報を独占されているがゆえに、官僚に絡め取られる報道記者たち、それでよしとするマスメディアの堕落をも難じている。著者の筆は、抑制されていながらも、かなり辛辣だ。福祉国家体制による行政システム(=国家組織)の肥大化は、行政の各部面の専門化による必然ではあるものの、同時にそれを隠れ蓑に、官の側に不当なカネの使い回し、もしくはプールを発生させてきた。天下り問題も、この文脈で捉えられるべきだが、問題は、マスメディアが、この行政システムの周縁に位置づけられた、ということではないか。私は、このマスコミのシステム内化という事態も半必然であると思っているが、ジャーナリズム総体が、このシステムの運動から、不断に逃れ続けるかぎりにおいて、批判的視線は担保されうるものだろう。