瀬川松子『亡国の中学受験 公立不信ビジネスの実態』 (光文社新書) レビュー

亡国の中学受験 (光文社新書)

亡国の中学受験 (光文社新書)



「公立不信ビジネス」とはよくぞいったり。少子化で影響受けるのは、社会人を受け入れられる大学よりもむしろ私立の中学高校、そして受験産業であることは明白。商売のために、公立のダメさかげんを煽ることで、私立中高のダメさが隠蔽されるのはフェアではない。ましてや、公務員という立場上、受験産業側のネガティブ・キャンペーンに反論するのを制限されているとすれば、なおさら。本書は、教育をめぐる言説を相対化するもののひとつとして位置づけられるが、それにしてもつくづく資本主義は必然的にファシズム的傾向を帯びるものなのだなあ、と。著者は、中学受験を「断念」することできない風潮に違和感を表明するが、中学受験なんて別世界の出来事であった私なんかは、かえって一度この「中学受験」というゲームにのめりこんだら降りられんわなあ、と思ってしまう。で、このゲームは、最終的に「大学受験」につながるわけだから、情況を根本的に改善するには、ここのところをなんとかしないと。ていうか、さらなる少子化とあとデフレの進行で、教育環境がかえって改善されたりして。