芦辺拓『綺想宮殺人事件』(東京創元社)レビュー

本日のエピグラフ

 「唯一の正しい解答か、そうでないかというだけのことです。可能性の一つなどとは言ってほしくもありませんよ――(…)」(P251より)

綺想宮殺人事件

綺想宮殺人事件



ミステリアス10
クロバット
サスペンス
アレゴリカル
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トータル45


 「知」の欺瞞、ならぬ「探偵小説」の欺瞞。というか、欺瞞が欺瞞を呼び、欺瞞に欺瞞を重ねて、そのまま欺瞞どもが反世界を落成してしまったような、そんな感じの大伽藍。そう、この作者が凡庸なアンチミステリを物するワケがなかったのでした。最後の最後に出てくる「探偵原理」は、戯れでなく、示唆に富むものではないか。