守屋武昌『「普天間」交渉秘録』(新潮社)レビュー

「普天間」交渉秘録

「普天間」交渉秘録



 著者の語るストーリーは、沖縄の地域振興利権屋が、アメリカと自民党国防族周辺をたらしこんで、「普天間」基地移設問題を長引かせ、中央からカネを引っ張ってくる奸計に、事務方の自分がハシゴを外された、というもの。文章が巧みなわりには、個々の役人・政治家たちの名前が乱舞するので、頭の整理がつかないとどうにも読みにくいが、要するにそういう構図だ。著者は、内調や特捜に睨まれたことを強く示唆するが、だとするなら、だ。「普天間」問題の最終解決を目指した著者が、それゆえ煙たがられたとするならば。とするならば、アメリカ側が「普天間」問題の解決を実は望んでいない、という可能性に思い至り、やっぱり「普天間」に、核、のようなものはあるんだろうなあ、と。先日ゲーツ国防長官は、海兵隊体制の見直しを掲げたが、巻末の論文も含めて本書を通読すれば、自然と深いふかい溜息をつくこと、うけあい。