江國香織『抱擁、あるいはライスには塩を』(集英社)レビュー

抱擁、あるいはライスには塩を

抱擁、あるいはライスには塩を



小説のテーマは、束縛と自由。“家族”がその外部である“社会”とは対立する規範を内に持つとき、“家族”の構成者たちは、自由なのか、束縛されているのか。作者は時系列をシャッフルさせて、この両義性を持つ様々な位相を詳らかにしていく。関係性を描くのに関しては、独特の手触りを読者に感じさせる作者が、その技量を全面的に展開させた渾身の一作。