高橋源一郎『さよならクリストファー・ロビン』(新潮社)レビュー

さよならクリストファー・ロビン

さよならクリストファー・ロビン



 3・11をまたいで『新潮』に掲載された六編を収録。作者の現在の関心は、おそらく“世界”のこちら側と向こう側の往還の倫理性、あるいは(不)可能性ということにあるのだろう。一見すれば、“世界”の救済ないし防衛という表象的なコンセプトがあからさまだけれども、“物語”を語ること自体にこめられた祈りにも似た意識は、子どもたちにいかに自分たちが彼らを愛していたかを示す痕跡を“世界”に残して、彼らの魂に寄り添い続ける。