法月綸太郎『キングを探せ』(講談社)レビュー

本日のエピグラフ

 「細かいことを言うなよ。チェスでも将棋でも、最終的な目標は敵の王を詰めることだ。四人目の共犯者というより、キングと呼んだ方が張り合いがある」(p.201)

キングを探せ (特別書き下ろし)

キングを探せ (特別書き下ろし)



ミステリアス
クロバット
サスペンス
アレゴリカル
インプレッション
トータル43


 先行作品を幾重にも喚起させる、タイトル以下の小説作りは、いかにもこの作者らしいこだわり。多重交換殺人ゲームのダイナミクスは、探偵=捜査側の奸計も孕んで、面妖な方向へ転がっていく。作者の内では、モダン・ディテクティブ・ストーリーは、物語内の過去と現在において、探偵プレーヤーが分裂を孕むものとして、プロット上の処理の物語的効果をどう狙うのか、というのが重要な項目として追加されているようだ。物語の大団円で現れるキングの顔は、笑っているのか、呆れているのか。