赤瀬川原平『妄想科学小説』(河出書房新社)レビュー

妄想科学小説

妄想科学小説



 80年代前夜に連載された、マボロシの掌編小説(からのエッセー)集。シュールさの追求は、エコノミーのロジックのほんの少し(?)のネジの外し具合に賭けられていて、作者にしても“時代”の予兆を感じていたのかもしれない。にしても、当時の出版界においての、宇宙ブームのあとは、哲学ブームが来る、という予言というか預言的文章を目にすると、もしかして作者の妄想の掌の上でニッポンの思想は踊ったのではないか、との妄想を抱いてしまうのは、いやはや。一方で、なにげに、社会体制への尖鋭な省察を覗かせて、油断のならなさにドキッとしたり。