江國香織『がらくた』(新潮社)レビュー

がらくた

がらくた



 
 作者は独特なシニカルな感性から、現代における“純粋な関係”性を捉え直して、独自の地位を築いた。決して、“恋愛”オンリーに拘らなかったわけだけれども、近年は性愛の関係性に関心を傾斜させているようだ。本作においての「がらくた」とは、“思い出”であるとともに、関係性を再確認するたびごとに、呼び出され、用が済んだら放っておかれる“何か”だろう。このまだ「がらくた」を背負っていない少女のシニカルさと、この少女のことをまぶしいと感じる女翻訳家のある種のイノセンスを並置させて、違和感がないのはさすが。