- 作者: 北村薫
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2009/04/01
- メディア: 単行本
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あとがき代わりの「参考文献」の頁の末尾「ことを見つめるのは人である。これらの様々な出来事の中に、登場人物達はいた」という一文のために、このシリーズが生み出されたのではないか、と一瞬思う。おそらくは、作者にとって“日常の謎”とは、「ことを見つめる」人と人の交流と断絶の謂いなのだろう。大正デモクラシーの延長上にあった昭和初期の幕切れとともに物語も閉じられるが、“断絶”の深さは、たぶん「登場人物」たち自身もそうと意識できぬほど、逆に諸々の情景にその不吉さを感じとるほど、果てないものだった。