米澤穂信『追想五断章』(集英社)レビュー

追想五断章

追想五断章


 
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トータル39


 作者の新境地。リリシズムという点では、『さよなら妖精』『ボトルネック』の質を超えている。結末部を隠匿してはからずもリドルストーリーとなった四編の小説はそれぞれ味わいがあるし、仕掛けもよろしい。ある家族が被った悲劇が、幾重ものベールの下から透けて見える、このような仕方でしか醸し出されない哀しみもあるのだな、と実感する。