仲正昌樹『なぜ「自由」は不自由なのか 現代のリベラリズム講義』(朝日新聞出版)レビュー

なぜ「自由」は不自由なのか 現代のリベラリズム講義

なぜ「自由」は不自由なのか 現代のリベラリズム講義



 著者の入信時代を綴ったものも刊行されているが、その前に著者の最新紙上講義を。“自由”が「不自由」であるのは、他者危害原則は自明の前提としても、「他者」の意味性が拡張化すれば、それはすなわち公的領域ということになり、つまりは公的なものが私的なものに占領、毀損されるケースが出てくる問題性があるわけで、一方で、「自由意志」というけれども、それが完全に“自由”な「意志」かどうか、その根拠の無底性という問題も孕み、この場合、帰責性の有無や、個々人の尊厳性にかかわってくる。著者は、“自由”の限界について、定番の話題から近時のトピックまで、多岐にわたって言及するけれども、功利主義的設計主義のユートピアには「何のための自由か?」という問いがアクチュアルなものになることを示唆する。