原田泰『日本はなぜ貧しい人が多いのか 「意外な事実」の経済学』(新潮選書)レビュー

新潮選書 日本はなぜ貧しい人が多いのか 「意外な事実」の経済学

新潮選書 日本はなぜ貧しい人が多いのか 「意外な事実」の経済学



 データも方便、という名言を吐いたのは、パオロ・マッツァリーノさん。要するに、データは「事実」であるけれども、道具でもあるってことで、あとは論者の料理次第、なんであって。本書のウリは、「流布している通説を統計データと経済学的思考で「逆説的」に覆す」ところにあるのだけれども、この「流布している通説」にワタクシめが無知であったせいか、「逆説的」な爽快感はあまり得られませんでした。もちろん、そのぶん、勉強になったり新しい知見を得たりはしましたけれども。まあ少年犯罪ネタとか、もうお馴染みのものも少々あり。62本のコラムで、経済学的な思考を養うのに最適で、とくに「労働人口が減少しても、(生産性の低い産業を)輸入に置き換えることによって、日本の豊かさは維持できる。それどころか、一段と生産性を高めてより豊かになることもできる」の一節に感じ入ってしまいました。