幕内秀夫『子どもが野菜嫌いで何が悪い! 』 (バジリコ)レビュー

子どもが野菜嫌いで何が悪い!

子どもが野菜嫌いで何が悪い!



 いいですね、100%の反栄養学。基本的に支持します。子どもが野菜を好まないのは、緑色の食物に対する抵抗感があるからで、実際に緑色の実は基本的には未熟であり、苦味がある。トマトなど成熟したことを示す赤黄色系の野菜は、逆に子どもに好まれる。子どもの好き嫌いは、個体の生存戦略的に理にかなっている場合が多く、野菜嫌いを馴らすために、野菜を細かく砕いたりすり潰したりして、それをドーナツやらココアやらに混ぜたり、フライの衣に混ぜてそれにタルタルソースをかけて供すれば、不要な油脂類を与える結果になり、本末転倒だ。著者の主張は、子どもの空腹には、とにかくご飯食、おかずは大人の都合でかまわず、残したらそれはそれでかまわない、とにかく子どものための食事を作るのはやめましょう、ということで、食事をめぐる精神的負担を減らせるのは、とってもいいこと。著者の栄養学批判の射程は、雨が少なくて基本的に寒い地域であるがゆえに、植物が育ちにくく家畜に頼らざるをえなかった「北緯五〇度の栄養学」を模範としてきた、戦後の栄養教育の見直しというテーマに届いている。