2023-01-01から1年間の記事一覧

かがみのはか

怪談えほん (6) かがみのなか作者:恩田 陸岩崎書店Amazon 恩田陸のこの絵本は、『ともだちできた』よりも、生々しいな。鏡のもつ無機質な不可思議さを、子どもの奔放な想像力と接合させて、おとなの読者をもビビさせる。まあ絵力の勝利とも言え るけれども。

傘寿の収穫

散歩の収獲作者:赤瀬川 原平日本カメラ社Amazon 一昔前の赤瀬川イズムを堪能。ていうか、今現在も、この感性は普遍的で、新鮮なものです。今、老人力というパワーボイスを使いこなせる、新老人はおるのかねえ。赤瀬川を超える老人なんて出てきそうもないねえ…

これもアフタヌーンか

スキップとローファー(1) (アフタヌーンKC)作者:高松 美咲講談社Amazon 今期のアニメは、これがよかったな。都会ズレしてない無垢というより天然な主人公は胃にもたれないし、相手の男キャラもよい感じだったね。今期は他にめぼしいものがないので、この原作…

流れ黒星

不死身のつもりの流れ星作者:最果タヒPARCO出版Amazon 最果タヒって、こんなつまらんもの書く人になっちゃったのかあ。これじゃ、韻を踏んでないラップバトルと同じじゃんな。パンピー層に媚びた結果だとすれば、なんともねえ。感性は鈍ってないのだから、さ…

おともだちが、きた

おともだち できた? (講談社の創作絵本)作者:恩田 陸,石井 聖岳講談社Amazon 恩田陸のこの絵本、こわいこわいって感想ばっかだけれどさ、おいらはこの本、ちょっと泣いたな。なんというか、小さいころから孤独感を味わってきたひとだったら、他人事じゃない…

注釈の多い料理店

宮沢賢治のおはなし (2) 注文の多い料理店作者:宮沢 賢治岩崎書店Amazon 宮澤賢治の童話は、総じて人を食ったものだと思うけれども、そういうお話には、和田誠のイラストのフラットな質感がよく似合うなあ。『注文の多い料理店』は基本的にホラーだけれども…

ディストピア・バイオレンス

維新断罪 -中小企業社長が喝破する、大阪の沈みゆく理由と再生私論-作者:坂本篤紀せせらぎ出版Amazon 大阪府はあきらかに新型コロナ対策で失敗してるのに、選挙結果はああだもの。こりゃ大阪はディストピアになるわなあ、と。何かこう、分断された、という物…

四月の墓

世界のエイプリルフール・ジョーク集 (中公新書ラクレ)作者:鈴木 拓也中央公論新社Amazon もうエイプリルフールなんてやめちゃえば、って思うけれども。ウソをついてもいいのは午前中だけ、午後からウソをばらすっていう、いつのまにかできたルールは、もう…

うるうるなやつら

【Amazon.co.jp限定】うる星やつら Blu-ray Disc BOX 2(メーカー特典:「キャラクターデザイン・浅野直之描き下ろし複製色紙」付)(1,2巻購入オリジナル特典:「トートバッグ(描き下ろしラムB)」「B2布ポスター(描き下ろしラムB)」引換シリアルコード付)(…

謝らない者は、殺める者なのだ

人はなぜ謝れないのか: 自分も相手も幸せになれる「謝罪」の心理学作者:ビヴァリー エンゲル日本教文社Amazon 謝れないねえ、あの政治家は。発言の無責任さ、軽々しさ、それだけでなく、あの発言のせいで、現場の役人が、また自裁するかもしれなかった。責任…

あいまいな本日の私

大江健三郎 『燃えあがる緑の木』 2019年9月 (NHK100分de名著)作者:小野 正嗣NHK出版Amazon 大江健三郎入門みたいな本が次から次へとでてくるのだろうが、まあとりあえず、いちばん安いコレから読んだほうがいいかもね。大江の代表作といったら、この「最後…

議員自殖の間違いじゃ

放送法と権力作者:山田健太田畑書店Amazon 高市ってほんとにばかだよね。過去にヘンな本だしたり、胡乱な人間とつきあったり、国会で軽率な発言をしたり。上のは例の「電波停止」答弁をしたころに出版された良著だけれども、国民の阿呆化がとまらなければ、…

三位一体の人話

三位一体の神話〈下巻〉作者:大西 巨人光文社Amazon 大西巨人の『三位一体の神話』、当時は函入りの凝った装幀だったのよ。今になってやっと読んだけれども、凡百のミステリー作家の捨象した因果因縁の領域をこそ詳らかに構成して、俗物根性の塊である男に「…

穴を見つけると手を突っ込みたくなる

なぜ、穴を見つけるとのぞきたくなるの? 子どもの質問に学者が本気でこたえてみた。作者:石川幹人朝日新聞出版Amazon どうも、ねえ。バリバリの理系の学者が嚙み砕いて質問に答える企画を、誠実に実践しているのだが、短い紙幅のなかで特定の結論に持ってい…

自己啓発の事故継発

自己啓発の罠: AIに心を支配されないために作者:マーク・クーケルバーク青土社Amazon コンパクトにまとまっていて、大変に読みやすい。というか、すくなくとも、中学生以上の一般人が読めるように、セネカやフーコーの思想・議論のアウトラインが付録として…

小説の詳説

(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法作者:香帆, 三宅笠間書院Amazon この著者は、小説を読むのはなにかの効用を得るため、と宣ってしまっているけれども、思わずうーんと唸ってしまうよねえ。本文中にも言及されてい…

腐蝕の行動

記者襲撃 赤報隊事件30年目の真実作者:樋田 毅岩波書店Amazon 遅ればせながらこの本を読了したときに、鈴木邦男の訃報を知り、なんともいえない気分になる。赤報隊事件と統一教会・勝共連合を結ぶラインを知りたかったが、読了して、総じてウヨクたちの蠢き…

オタクを気分で生きていく

オタクを武器に生きていく (14歳の世渡り術)作者:吉田 尚記河出書房新社Amazon これからはオタクの時代だあああ、なんて言説はもう30年くらいの年季がはいってるんです。こんな言説を前にして、胡散臭く思わないオタクって、存在してるんですかね。14歳…

「SDGs」はこのままでいいのかな

科学はこのままでいいのかな ――進歩?いえ進化でしょ (ちくまQブックス)作者:中村 桂子筑摩書房Amazon サイエンスというものが、部分・局所観察から、種の全体とその進化を対象とし始めたとき、エコロジーから自然主義が消え、計測主義的な破壊のシミュレー…

一般意思0.2 減価版

一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル (講談社文庫)作者:東 浩紀講談社Amazon たまたま読んだあずまんの10年以上前の本。これを読めば、今のあずまんの壊れっぷりが、如実にわかる。前半のルソー論は、大大大傑作よ。ルソーという陰キャが、コミュニケ…

むかし無化し

むかしむかしあるところに、哲学者がやってきた。 7つの昔話で学ぶ哲学入門作者:小川 仁志高橋書店Amazon 小川仁志の活躍ぶりは、基本的に好感を抱いている。ジブリとか鬼滅の刃とかはやりに乗っかる姿勢はさすがに苦しいところがあるけれども、まずは啓蒙の…