作者名カ行

門井慶喜『東京帝大叡古教授』(小学館)レビュー

東京帝大叡古教授作者: 門井慶喜出版社/メーカー: 小学館発売日: 2015/03/13メディア: 単行本この商品を含むブログ (10件) を見る 歴史ミステリだが、タイトルのあそびがあるだけに、衒学的趣向への関心が勝ってしまう。ただ、作者のスタンスは、こちらが思…

久住四季『星読島に星は流れた』(東京創元社)レビュー

本日のエピグラフ 「それぞれが唯一無二。そして、この島を訪れて多くの情報をもたらしてくれる。わたしにとっては、皆さんこそが、“隕石”そのものなんです」(p.105) 星読島に星は流れた (ミステリ・フロンティア)作者: 久住四季出版社/メーカー: 東京創元…

近藤史恵『岩窟姫』(徳間書店)レビュー

岩窟姫 (文芸書)作者: 近藤史恵出版社/メーカー: 徳間書店発売日: 2015/04/09メディア: 単行本この商品を含むブログ (7件) を見る 全く以て、タイトルがすべてを表している。復讐の念が籠った少女タレントの捜査行は、試行錯誤の危うさを抱えながらも、敵の…

小島正樹『呪い殺しの村』(双葉社)レビュー

呪い殺しの村作者: 小島正樹出版社/メーカー: 双葉社発売日: 2015/02/18メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る ミステリアス8 アクロバット9 サスペンス8 アレゴリカル7 インプレッション7 トータル39 作者の講談社ノベルズのシリーズの…

河合莞爾『粗忽長屋の殺人(ひとごろし) 』(光文社)レビュー

粗忽長屋の殺人(ひとごろし)作者: 河合莞爾出版社/メーカー: 光文社発売日: 2015/02/18メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (2件) を見る 作者の新境地、というより、手数を示してきた感があるが、こちらの期待した方向性とはやや違った。…

近藤史恵『私の命はあなたの命より軽い』(講談社)レビュー

私の命はあなたの命より軽い作者: 近藤史恵出版社/メーカー: 講談社発売日: 2014/11/13メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (8件) を見る ストレートな心理サスペンス、というわけではない。ドメスティック・スリラーとも、一線を画すだろ…

北森鴻 浅野里沙子『天鬼越 蓮丈那智フィールドファイルV』(新潮社)レビュー

天鬼越: 蓮丈那智フィールドファイルV作者: 北森鴻,浅野里沙子出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2014/12/22メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る 北森の未収録短編二本と、原案を浅野がノベライズした表題作と、衣鉢を継いだオリジナル短編三本…

門井慶喜『注文の多い美術館 美術探偵・神永美有 』(文藝春秋)レビュー

注文の多い美術館 美術探偵・神永美有作者: 門井慶喜出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2014/11/26メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る シリーズ新作。対象物がホンモノかニセモノか、という真贋判定モノのフォーマットから、いかに巧みに逃…

北山猛邦『オルゴーリェンヌ』(東京創元社)レビュー

オルゴーリェンヌ (ミステリ・フロンティア)作者: 北山猛邦出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2014/11/21メディア: 単行本この商品を含むブログ (9件) を見る 前作より七年ぶりの続編だが、率直な感想としては、“世界”の空間性に思ったほど奥行がないので…

鏑木蓮『イーハトーブ探偵 ながれたりげにながれたり: 賢治の推理手帳I 』(光文社文庫)レビュー

本日のエピグラフ その顔を見ると、学問というものはどこまでいっても果てがない。そんなことを教えたいのかもしれないと思う。(「ながれたりげにながれたり」p.16) イーハトーブ探偵 ながれたりげにながれたり: 賢治の推理手帳I (光文社文庫)作者: 鏑木蓮出…

河合莞爾『ダンデライオン』(KADOKAWA)レビュー

ダンデライオン作者: 河合莞爾出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店発売日: 2014/10/01メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る ミステリアス8 アクロバット8 サスペンス8 アレゴリカル7 インプレッション8 トータル39 このシリーズは安定…

霞流一『フライプレイ!  監棺館殺人事件 』(原書房)レビュー

フライプレイ!: 監棺館殺人事件 (ミステリー・リーグ)作者: 霞流一出版社/メーカー: 原書房発売日: 2014/10/24メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る 探偵小説的スノビズムを突き詰めれば、こんなカタチに帰結するのは、ジャンルの宿命か、この…

鯨統一郎『オペラ座の美女  女子大生桜川東子(さくらがわはるこ)の推理 』(光文社)レビュー

オペラ座の美女 女子大生桜川東子(さくらがわはるこ)の推理作者: 鯨統一郎出版社/メーカー: 光文社発売日: 2014/08/19メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (1件) を見る サブカルネタのテンプレぶりが相変わらず愉しいシリーズ。今回はオ…

川瀬七緒『水底の棘 法医昆虫学捜査官』(講談社)レビュー

水底の棘 法医昆虫学捜査官作者: 川瀬七緒出版社/メーカー: 講談社発売日: 2014/07/18メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (9件) を見る 好評シリーズの第三作。第二作目が思い切った設定と展開だったのと比べると、やや食い足りないかも…

岸田るり子『パリ症候群 愛と殺人のレシピ』(講談社)レビュー

パリ症候群 愛と殺人のレシピ作者: 岸田るり子出版社/メーカー: 講談社発売日: 2014/06/11メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る いいですね。ギミックの構築と関係性のパトスの絡ませ方が堂に入ってます。悪意、というより、情況にか…

鯨統一郎『冷たい太陽』(原書房)レビュー

本日のエピグラフ 「これは空想で書かれたものじゃない。すべて本当のことだ」/(…)/「小説だったら探偵社じゃなく出版社に送るだろ」(p.191) 冷たい太陽 (ミステリー・リーグ)作者: 鯨統一郎出版社/メーカー: 原書房発売日: 2014/06/13メディア: 単行…

近藤史恵『胡蝶殺し』(小学館)レビュー

胡蝶殺し作者: 近藤史恵出版社/メーカー: 小学館発売日: 2014/06/20メディア: 単行本この商品を含むブログ (10件) を見る 作者の十八番という期待値込みで読むと、それは叶えられるが、それよりも思わぬところにカタルシスを企図されて、意表を突かれた感が…

叶紙器『回廊の鬼』(光文社)レビュー

回廊の鬼作者: 叶紙器出版社/メーカー: 光文社発売日: 2014/04/18メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (2件) を見る 福ミス受賞後第一作。本格ミステリ的な要素と、中盤のパニック型サスペンスの、物語的な整合性が取れているとはいい難い…

黒川博行『破門』(KADOKAWA)レビュー

破門 (単行本)作者: 黒川博行出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店発売日: 2014/02/01メディア: 単行本この商品を含むブログ (22件) を見る 作者の看板シリーズの最新作。痛快ピカレスク小説の王道というか無軌道ぶりを愉しめるけれども、でもやっぱり王道と…

香納諒一『無縁旅人』(文藝春秋)レビュー

無縁旅人作者: 香納諒一出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2014/03/27メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る 『贄の夜会』から8年ぶりのシリーズ続編ということであれば、帰ってきた、という枕詞を使いたくなるが、本作は前作と違い、正道の社…

川瀬七緒『桃ノ木坂互助会』(徳間書店)レビュー

桃ノ木坂互助会 (文芸書)作者: 川瀬七緒出版社/メーカー: 徳間書店発売日: 2014/02/14メディア: 単行本この商品を含むブログ (9件) を見る タイトルでほのぼの人情話を想像すると、見事に裏切られる。いやあ、主要登場人物ほとんどが感情移入できない(笑)。…

梶永正史『警視庁捜査二課・郷間彩香 特命指揮官』(宝島社)レビュー

警視庁捜査二課・郷間彩香 特命指揮官作者: 梶永正史出版社/メーカー: 宝島社発売日: 2014/01/10メディア: 単行本この商品を含むブログ (8件) を見る 今年度のこのミス大賞は、比較的ストーリーラインのくっきりとしたものが選ばれたようだ。二作のうち、こ…

倉知淳『シュークリーム・パニック ―Wクリーム― 』(講談社ノベルス)レビュー

シュークリーム・パニック ―Wクリーム― (講談社ノベルス)作者: 倉知淳出版社/メーカー: 講談社発売日: 2013/11/07メディア: 新書この商品を含むブログ (10件) を見る 新書二分冊刊行の短編集のうち、『生チョコレート』の方は評判が今ひとつなようで、作者の…

小島達矢『シュレーダーの階段』(双葉社)レビュー

シュレーダーの階段作者: 小島達矢出版社/メーカー: 双葉社発売日: 2014/01/21メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る サスペンスフルであるだけに、作者にとっては新境地なのかもしれない。ただ、小説のニュアンスの部分が、従来のB級マンガ・…

喜多喜久『二重螺旋の誘拐』(宝島社)レビュー

二重螺旋の誘拐 (『このミステリーがすごい!』大賞シリーズ)作者: 喜多喜久出版社/メーカー: 宝島社発売日: 2013/11/11メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る ミステリアス8 アクロバット8 サスペンス8 アレゴリカル7 インプレッション8 …

京極夏彦『書楼弔堂 破暁』(集英社)レビュー

書楼弔堂 破暁作者: 京極夏彦出版社/メーカー: 集英社発売日: 2013/11/26メディア: 単行本この商品を含むブログ (27件) を見る 作者の持ち味は、衒学性とそれを喚起させる小説の表象性の妙であるけれども、今回はそれが、虚実のあわいというか、威厳と諧謔の…

河合莞爾『デビル・イン・ヘブン』(祥伝社)レビュー

デビル・イン・ヘブン作者: 河合莞爾出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2013/12/11メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る 面白い、のだけれども、何かお勉強させられた気分。作風、といってしまっていいものかどうか。どうも、ディテールというよ…

霞流一『奇動捜査 ウルフォース』(祥伝社ノン・ノベル)レビュー

奇動捜査 ウルフォース (ノン・ノベル)作者: 霞流一出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2013/10/29メディア: 新書この商品を含むブログを見る いやまさに「超警察小説」ですね。ハメの外し方は期待通りとして、それにしても、カーにおけるオカルティズムが、作…

喜多喜久『化学探偵Mr.キュリー』(中公文庫)レビュー

化学探偵Mr.キュリー (中公文庫)作者: 喜多喜久出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2013/07/23メディア: 文庫この商品を含むブログ (17件) を見る 第二話が個人的にツボ。理系ミステリーとしての処理の仕方が、あそびの部分を持たせているようで、口当た…

小島達矢『ジューン・プライド』(文藝春秋)レビュー

ジューン・プライド作者: 小島達矢出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2013/10/10メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る 素直に愉しめたのだけれども、あともうひとつ何かを欲張ってほしい、とは思うのだけれども。もっと、決定的な“奇蹟”を見た…