川上未映子『わたくし率 イン 歯ー、または世界』(講談社)レビュー

わたくし率 イン 歯ー、または世界

わたくし率 イン 歯ー、または世界



 
わわわ、まさかこんなカタチで、西田幾多郎的主題にアプローチするなんて。“於いてある”場所としての「奥歯」と「お母さん」。最終的に「奥歯」が抜かれることで、「わたくし率が、限りなく無いに近づいて同時に宇宙に膨らんで」、主人公は「純粋経験」を迎えることになる。世界の中心で「在る」を叫んで、のけものにされぬよう、「あたしらはみんな、幸せになる権利があるねんから」。